制御盤の筐体とは|素材や設計のポイントについて

1.制御盤の筐体とは何か

制御盤の筐体は、産業機械や製造ラインへ電力を供給し、その動作を制御・操作する上で欠かせない、電気機器や装置を内蔵したカバーのことを指します。

制御盤の筐体役割

筐体の役割は多岐にわたります。その中でも一番重要な役割は、安全性の確保と内部機器の保護です。筐体は基本的にアースに接続されており、筐体内で発生した漏電から人を保護する役割を担っています。

また工場内で発生する熱、オイルミスト、化学物質、ちり、液体などから、内部の機器を守ります。加えて、他の装置や予期せぬ異物が機器に接触することや、人や動物が機器に触れて感電することを防ぐなど、電気を安全に使用するためには欠かすことのできない存在です。

2.金属製制御盤筐体の材質と特性

制御盤の筐体に使用する素材の選定は重要です。安価な素材を選ぶだけでは、耐腐食性や強度が不足し、すぐに錆びついたり変形したりして内部機器に被害を及ぼす可能性があるため、使用環境を考慮し、コスト面と耐久面の両方に見合った板材を選択することが極めて重要です。

金属製筐体の利点

金属製の筐体は、その強度と耐久性が最大のメリットです。特に産業用や屋外設置用として使用されており、鋼鉄製やステンレス製など、耐久性の高い金属筐体が使われます。強度に優れるため、大型の制御盤や自立型の筐体に適しています。

鉄鋼(鋼板):鉄は最も一般的に用いられる素材の一つです。メリットは安価で耐久性が高いことです。しかし、鉄であるため錆びやすいという弱点があり、耐腐食性を高めるために表面塗装やメッキ処理をして使用されます。

ステンレス鋼板:ステンレス鋼板は錆びにくく、加工もしやすいという特性を持っています。塩害が発生しやすい海の近くなどの過酷な環境でも信頼性が高く、制御盤に限らず様々な用途で利用されます。SUS304やSUS430などがよく用いられます。

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アルミ板:アルミ板は軽量であり、コントロールボックスなどの小型制御盤の製作によく用いられます。強度が比較的弱く曲がりやすいという欠点があるため、大型の筐体には向きませんが、小型用途では十分な強度を持ち、加工性も良好です。表面に酸化膜を形成するアルマイト処理を施すことで、耐腐食性をさらに高めることができます。

ZAM鋼板:非常に優れた耐食性を持つ鋼板で、通常の鉄鋼板と比較して経年による錆びに強く、長期間の使用に向いています。

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メッキ鋼板(黒ZAM)を採用し、塗装工程を短縮

3.制御盤筐体の設計と構造

制御盤筐体設計時の重要なポイント

寸法(公差・精度):切断や曲げ加工の際に、プレス加工の特性上、材料の寸法がわずかに変化することがあります。設計段階で許容される誤差の範囲(公差)を設定しておくことが重要です。

逃がし:穴の変形や材料の割れといった板金加工特有のトラブルを防ぐために、設計時に「逃がし」を設けることがあります。例えば、曲げ線に近い穴には材料逃げを防ぐための逃がし穴を開けたり、曲げ線が交差する部分や板厚との関係で割れやすい部分には切り欠き状の逃がしを設けたりします。

フレーム構造:制御盤の大きさや重量に応じて、筐体の骨組みとしてフレーム構造を採用するか、あるいはフレームなしで鋼板のみの箱状とするかを判断する必要があります。大きく重い制御盤をフレームなしで製作すると、吊り下げ時に鋼板が裂けたり、設置場所の天井が変形したりする危険性があります。

屋内設置用の設計ポイント

屋内での使用は、オイルミストやちりを考慮する必要があります。そのため、屋内設置用の筐体設計では、使用環境ごとに適切な板の素材や表面処理を検討します。また、ちりや粉塵の侵入を防ぐための防塵対策をしっかりと施すことが重要です。さらに、常に高温になる環境下では、制御盤クーラーやファンを設置して内部を冷却するなど、熱対策も配慮する必要があります。

屋外設置用の設計ポイント

防水・防塵対策:屋外では雨水が浸入する可能性が高いため、基本的にパッキンなどによる徹底した防水対策を施します。屋内ではシーリングされない筐体の穴も、屋外では雨水やちりの侵入を防ぐためにシリコンなどでシーリングし、密閉性の高い構造にする必要があります。

熱対策:直射日光にさらされる屋外環境では、筐体内の温度が上昇する可能性があるため、冷却や空気の滞留を防ぐためのファンやクーラーが取り付けられることがあります。筐体全面に遮光板を設置し、内部の機器に直射日光が直接当たらないようにすることで、温度上昇を抑えることも可能です。断熱材や、ルーバーベンチレーターを設置して熱の逃げ道を作ることで、内部温度の上昇を抑制する対策も有効です。

耐腐食性:屋外で使用される筐体は、鋼鉄製やステンレス製など、特に耐久性の高い金属筐体が採用されます。耐腐食性が求められる環境では、ZAM(高耐食溶融めっき)鋼板のような優れた耐食性を持つ素材が使用されます。

4.特定用途向け制御盤筐体の用途

特定用途向け制御盤筐体の例

制御盤の筐体は、制御する機器の用途や設置環境、求められる複雑な機能に応じて、個別に設計・製作されます。

工場向け制御盤筐体:多くの機器をの配置や冷却システム、操作部、モニターなども考慮した複雑な設計が求められます。生産工場、化学工場、食品工場など、幅広い分野で活用されています。

建物設備向け制御盤筐体:建物の空調設備において、室内の温度や湿度を適切に管理するために複数のクーラーを制御する制御盤、エレベーターの上下動モーターの制御などで、専用筐体が使われます。

通信盤やデータセンター関連制御盤筐体:光回線やLANケーブルなどを収めるネットワーク用キャビネットなど、通信インフラを支える設備にも専用筐体が使用されます。

デジタルサイネージ:屋外型、自立型、壁面取付型など、設置場所やディスプレイの構成に応じた専用筐体が設計・製作されます。

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電磁波対策向け制御盤筐体:精密機器が密集する環境や、電磁ノイズが問題となる場所で利用され、機器の誤動作を防ぐ役割を果たします。

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