板金加工に用いられる鉄の種類と選定のポイント

↓ 筐体 設計・製作に関する基礎知識とコストダウンのポイントをご紹介!↓

鉄材料の特長

鉄が多くの現場で選ばれる一番の理由は、コストと加工性のバランスです。

コストパフォーマンス
鉄は資源量が多く、供給が安定しているため、アルミやステンレスに比べて価格を抑えやすい素材です。鉄は試作段階から量産品まで、コストを重視する製品に最適です。

加工性
曲げ、抜き(切断)、溶接など、板金加工の基本工程の加工を施しやすいことも鉄の特徴です。適度な延性があるため、加工時に割れにくく、仕上がりの精度も安定します。鉄は設計通りの形をつくりやすい素材です。

ただし、鉄には大きな弱点もあります。それは「錆びやすい」ことです。防錆処理をしなければ劣化が早まるため、塗装やメッキといった処理はほぼ必須です。鉄を選ぶ際は「錆対策」も同時に考える必要があります。

板金でよく使われる鉄の種類と特徴

鉄といっても、その種類は一つではありません。圧延の方法や表面処理の有無によって性質が変わるため、用途に応じた選定が重要です。ここでは代表的な4種類を取り上げます。

1.SPCC(冷間圧延鋼板)

常温で圧延された鋼板で、表面の滑らかさと板厚精度の高さが特徴です。見た目がきれいなため、外装カバーなどデザイン性が求められる製品によく使われます。
防錆処理はされていないため、加工後は塗装や防錆対策を早めに行う必要があります。表面が傷つきやすいので、取り扱いには注意が必要です。

2.SPHC(熱間圧延鋼板)

高温状態で圧延された鋼板で、表面は黒皮(くろかわ)と呼ばれる酸化被膜で覆われています。SPCCより安価で厚板のラインナップも豊富なため、機械のフレームやベースプレートなど、構造部品に使われることが多い素材です。
黒皮は塗装や溶接の妨げになるため、溶接をする際にはショットブラストや酸洗などで除去するのが一般的です。

3.SECC(電気亜鉛メッキ鋼板)

SECCは、SPCCに電気亜鉛メッキを施した素材です。防錆性に優れており、屋外盤や制御盤など、耐食性が必要な板金によく使われます。メッキ層がある分、溶接時にはヒュームが出やすく、強い曲げでメッキが剥がれるフレーク現象が起きる場合があります。

4.SECC-P(ポンデ鋼板)

ポンデ鋼板は、SECCの表面にリン酸塩処理を加え、塗装の密着性を高めた素材です。塗料がしっかり食いつくため、塗装の仕上がり・耐久性が非常に高く、自動車のボディや家電の外装などに使われています。性能を最大限発揮させるには、加工後の脱脂・洗浄を丁寧に行うことが必要です。

鉄材選定の4つのポイント

板金製品の品質やコストは、どの鉄材を選ぶかによって大きく変わります。以下の4つの視点を押さえておくと、素材選定をスムーズに進めることができます。

  1. 使用環境を考える
     湿気が多い場所や屋外で使用する場合は、防錆性が重要なポイントになります。
     → 防錆性の高い「SECC」または「SECC-P」を選ぶと安心です。
  2. 精度・外観の仕上がりを意識する
     外装やデザイン性が重視される製品では、表面がきれいな素材が向いています。
     → 「SPCC」または「SECC-P」が適しています。
  3. コストとのバランスを取る
     構造部品など外から見えない部分は、見た目よりコスト優先で考えるのが一般的です。
     → 黒皮処理のコストも考慮が必要ですが、価格を抑えられるSPHCが適しています。
  4. 後処理(塗装・溶接)を見据える
     塗装や溶接のしやすさも、仕上がりと工程コストに直結します。
     → 塗装には「ポンデ鋼板」、溶接には「SPCC」が扱いやすい素材です。

当社の鉄製筐体の製作事例をご紹介

産業用コンピュータ 鉄製 筐体

こちらは、産業用コンピューター筐体の事例です。

上記のように、多部品の加工が必要だったため、プレス加工と板金加工の両方を用いることで、コストを抑えて加工を実施いたしました。

プレス加工についても、お客様の金型予算に合わせて加工対応をしたため、より安価なコストで製作をしています。

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鉄製 OCR筐体

こちらは、OCR筐体の製作事例です。

OCR筐体の製作は、紙にキズを付けず、文字を読み取るため、精密な加工が必要となっています。当社は、部品のバリ取りと細かい曲げ加工を行い、キズのないよう製作しております。

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通信機器 筐体

こちらは、通信機器筐体の製作事例です。

溶接加工にて接合をしており、R曲線の箇所は、左右対称となるよう注意して加工をしました。仕上げには、表面処理を実施し、R曲線の品質や強度を確保しております。

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まとめ

鉄は、加工しやすくコストも抑えられることから、板金加工に欠かせない素材として長く使われてきました。
SPCC、SPHC、SECC、ポンデ鋼板など、それぞれの特性を理解し、目的に合った素材を選ぶことが、高品質でコストパフォーマンスに優れた製品づくりにつながります。

精密筐体・フレームファクトリーは、2m×1mのハイグレードな筐体・フレームを始めとする、精密板金加工を得意としております。またお客様の要件に合った素材への変更や、設計変更による、品質向上やコスト削減の実績が多数ございます。

お客様の品質・納期・ロット数などのご要望にお応えすることをお約束いたしますので、まずはご相談ください。

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