溶接品質を確認する「カラーチェック(浸透探傷試験)」の重要性
溶接不良による欠陥を、目視で確認することは困難です。こうした見逃されがちな表面の欠陥を確実に検出し、品質管理を徹底するために不可欠な非破壊検査の一つが、カラーチェックです。
本記事では、この溶接におけるカラーチェックの基礎知識や、正しい手順、確実な判定基準について解説します。
溶接におけるカラーチェックの重要性
カラーチェックとは

カラーチェックは、正式には染色浸透探傷試験とも呼ばれ、表面の微細なキズを検出する非破壊検査の1つです。金属、非金属を問わず、表面に開口したクラックであれば検出できるため、幅広く利用されています。溶接においては、巣穴、割れ、ブローホールなどの溶接欠陥を発見するために使用されます。
なぜカラーチェックで溶接欠陥を確認できるのか
カラーチェックでは、まず赤色で浸透性の良い検査液を試験体に塗布します。浸透液が毛細管現象でキズの奥深くまで浸透します。その後、表面に残った浸透液を洗浄し、白色微粉末の現像剤を塗布します。この現像剤が、キズの中に残っていた浸透液を吸い出すことで、白地に赤色の指示模様として欠陥部が視覚的に浮かび上がる仕組みです。このように、色の変化を通じて、肉眼では見えない微細な欠陥を簡単に確認できます。
見逃せない溶接不良のリスクとその影響
小さな溶接不良であっても、見逃してしまうと製品の耐久性や安全性に重大な問題を引き起こしかねません。溶接部のブローホールやクラックは、製品の強度を著しく低下させるため、使用中の破損など重大な事故に繋がる可能性があります。カラーチェックは、このような目視では発見困難な欠陥を的確に発見し、製品の品質を保証するために、非常に重要です。
カラーチェック(浸透探傷試験)の手法と具体的な手順
ここでは、現場で広く採用されている溶剤除去性染色浸透探傷試験の標準的な5ステップ手順を、現場での注意点を交えて解説します。
カラーチェックの基本的な流れ
- 前処理・清掃
- 浸透処理
- 除去 / 洗浄処理
- 現像処理
- 観察・評価
各工程の詳細
(1) 前処理・清掃
洗浄液を用いて、検査表面の油脂、汚れ、塗膜などを完全に除去し、欠陥部を開口させます。洗浄が不十分だと浸透液をはじいてしまうため、入念に拭きとるのがポイントです。洗浄後は、表面を充分に乾燥させます。
(2) 浸透処理
浸透液(赤い色をしている)を検査箇所へ塗布します。塗布が完了したら、浸透液を欠陥部に充分に浸透させるため、通常5分〜60分間放置します。材質や温度条件に応じて、適切な浸透時間を確保することが重要です。
(3) 除去 / 洗浄処理
表面の余剰浸透液を除去します。この際、キズ内部の浸透液まで除去してしまうと検査ができないため、直接洗浄液をスプレーせず、ウエスに軽く洗浄液を染み込ませた状態で、表面の余剰分だけをきれいに拭き取る必要があります。キズ内部の液まで除去しないよう、力加減に注意して慎重に作業することが、欠陥の見落としを防ぐ重要なコツです。
(4) 現像処理
現像剤(白色微粉末)を検査箇所へ薄く均一に塗布します。厚すぎると欠陥が見えづらくなるため、塗布量が鍵となります。塗布後、通常10分~30分間の現像時間を置きます。
(5) 観察・評価
現像液が欠陥内部の浸透液を吸い出し、溶接不良があれば不具合箇所が赤く変化します。明るい所で検査物表面を注意深く観察し、白地に赤色の指示模様として現れた部分がないか確認します。色の変化がなければOKです。
カラーチェックの判定基準
カラーチェックの合格基準と不合格の判断
カラーチェックは、JIS規格に基づき、手順や判定基準が細かく定められています。現場では、このJIS規格と、製品固有の仕様書に基づき、合否を判断します。
合否を分ける主な判定基準のポイントは以下の通りです。
- 欠陥の有無: 表面に割れ、キズ、ピンホール、クラックなどがないこと。溶接部品においては特にこの点が重視されます。
- 欠陥のサイズ: 規定サイズ以上の欠陥は不合格となります。許容サイズは製品の用途により異なるため、JIS規格や製品図面で基準サイズを確認します。
- 欠陥の分布状態: 一定範囲内に欠陥が集中している場合も、不合格となることがあります。
万が一、赤く変化した部分(キズ模様)が観察され、不具合と判断された場合は、溶接にて修正をします。
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いかがでしたでしょうか、板金筐体における重要なカラーチェックについてご説明いたしました。
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