板金設計の完全ガイド|基礎・コスト削減・用途別のポイントまで徹底解説
板金設計とは、単に金属板の形状を決めるだけでなく、製品の品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)を決定づける製造業における極めて重要なプロセスです。
板金加工は「一枚の金属板を切断・曲げ・溶接して形を作る」という特性上、加工の限界や材料の特性を理解した設計(板金設計)を行わなければ、製造段階での不具合やコスト増大を招いてしまいます。
本記事では、板金設計におけるモデリングの基礎から、設計段階で取り入れるべきコストダウン手法(VA/VE)、さらにサーバーや医療機器など用途別の設計ポイントまでを統合して解説します。
1. 板金設計におけるモデリングの基礎ルール

板金設計において最も重要なのは、「実際に加工可能なデータであるか」という点です。3D CAD上で形状が成立していても、物理的に製造不可能な設計になっていないか、以下の基本ルールを確認しましょう。
① 展開図として成立すること(1枚の板になるか)
板金加工の基本は、一枚の板を展開・切断し、それを折り曲げて立体にすることです。
- ルールの徹底: データ上で展開した際に、部品同士が重なったり(干渉)、分離してしまったりしないかを確認する必要があります。展開時に必ず「1枚の板」になることが板金設計の大前提です。
② 板厚の均一性と曲げのルール
- 板厚は常に均一に: モデリングの過程で板厚が変わってしまうミスは頻発します。常に一定の板厚が保たれているか確認しましょう。
- 最小曲げ半径の確保: 材質や板厚ごとに「曲げられる最小の半径」が決まっています。これを無視した設計は、曲げ部の割れやシワの原因となります。「曲げ外R = 内R + 板厚」の基本式を意識してください。
③ 加工限界と干渉の回避
- 穴と端面の距離: 穴が板の端に近すぎると、加工時の圧力で端面が膨らんだり変形したりします。板厚に応じた適切な距離(目安として板厚の2〜3倍以上など)を確保します。
- 穴と曲げの距離: 曲げ加工の近くに穴があると、引張・圧縮応力により穴が変形します。穴位置は曲げ根元から「板厚の4〜5倍」離すのが安全圏です。
- コの字曲げの干渉: コの字型の曲げでは、立ち上がりの高さに対して底面が短すぎると金型と干渉して加工できません。
2. 板金設計のコストダウンと品質向上のポイント

製造コストの約80%は設計段階で決まると言われます。板金設計の段階でVA(価値分析)/VE(価値工学)の視点を取り入れることで、品質を維持・向上させながら大幅なコストダウンが可能です。
① 加工工程の簡素化・工法転換
- 溶接からリベット・カシメ接合へ: 溶接は強度が高い反面、熟練技術が必要で「熱歪み」が発生しやすく、仕上げ工数もかかります。これをリベットやカシメ接合に変更することで、歪みをなくし、作業時間を大幅に短縮できます。
>>溶接から「リベット接合」への転換で得られるメリットについて詳しくはこちら - 曲げ加工による一体化: 複数の部品を溶接やネジで繋ぐのではなく、曲げ加工を駆使して1つの部品として一体成型することで、部品点数と管理工数を削減できます。
>>精密板金加工における曲げと強度の基礎知識はこちら
② 材料選定による工程短縮
- 塗装レス化: 一般的な鉄(SPCC)+塗装の仕様を、高耐食性メッキ鋼板(ZAMや黒ZAM、カラー鋼板)に変更することで、塗装工程自体を省略できます。これによりリードタイムを1週間以上短縮した事例もあります。
>>手作業の塗装から、粉体塗装レス化で大幅コストダウンを実現した事例はこちら - 最適な材質への変更: 屋内使用であれば、高価なSUS304(ステンレス)ではなく、安価なSUS430やSUS443へ変更することで、耐食性を実用範囲に保ちつつコストを抑えることが可能です。
>>板金筐体における材料選定のポイントはこちら
>>SUS304とSUS430 選定のポイントの詳細はこちら
>>板金加工に用いられる鉄の種類と選定のポイントはこちら
3. 【用途別】専門性が求められる板金設計のポイント
製品の用途によって、板金設計で重視すべき機能や制約は異なります。
サーバー筐体・ラック(高精度・放熱・EMC)

- 高精度と堅牢性: 数百キロの機器を搭載するため、歪みのない堅牢なフレーム構造が必要です。大型ラックであっても「チリ(隙間)」を合わせる高精度な設計・加工が求められます。
- 熱対策(放熱設計): 高密度実装による熱暴走を防ぐため、エアフローを計算したパンチング(穴あけ)加工やファンの配置設計が重要です。
- EMC(電磁波)対策: 導電性のある材料選定や、隙間をふさぐシールド構造により、ノイズの漏洩・侵入を防ぎます。
>>サーバー筐体・ラック製造の設計の詳しくはこちら
>>サーバー筐体の製作事例はこちら
医療機器用筐体(衛生・美観・安全性)

- 衛生面の配慮: 血液や薬品の拭き取りやすさを考慮し、凹凸の少ない形状や、錆に強いステンレス(SUS304)の使用が一般的です。
- バリレス・安全性: 人が触れる機器であるため、端面の「バリ」は厳禁です。抜き加工時のクリアランス調整や、端面が触れないような曲げ設計を行うなど、安全性を最優先した板金設計が必要です。
- 認証への対応: 医療機器は一度認証を取得すると設計変更が難しいため、初期設計の完成度が極めて重要になります。
>>医療機器用の筐体設計・製作のポイントについて詳しくはこちら
>>医療機器用板金筐体の製作事例はこちら
制御盤・屋外筐体(防水・防塵・耐候性)

- 防水・防塵設計: 屋外設置では、パッキンやシーリングを活用し、水や粉塵の侵入を防ぐ(IP規格への対応など)密閉構造を設計します。
- 熱対策と遮光: 直射日光による温度上昇を防ぐための遮光板(二重構造)や、ルーバー加工による通気性の確保も検討します。
>>制御盤・屋外筐体の設計のポイントについて詳しくはこちら
>>制御盤の製作事例はこちら
当社は、コストダウンに関することなど、VA/VE提案も行っております。詳細は下記のリンクからご覧ください。
>>精密筐体・フレームファクトリーが提供するVA・VE事例一覧
4. 板金設計でよくあるトラブルを未然に防ぐ
板金設計において発生しやすいトラブルと、その回避策を知っておくことは重要です。
- 溶接歪み: 薄板の溶接は熱で歪みやすく、寸法精度が出ない原因になります。前述のリベット接合への変更や、熱影響の少ないファイバーレーザー溶接の採用を検討します。
- 組立て不良: 設計画面上では組めても、実際に工具が入らない、手が届かないといった問題が起きがちです。組立手順やメンテナンス性(アクセスのしやすさ)を考慮したスペース確保が必要です。
>>筐体設計時によく発生するトラブルについて詳しくはこちら
>>溶接不良が引き起こす問題と対策について詳しくはこちら
板金設計・筐体設計当社にお任せください
板金設計は、材料の特性、加工機の能力、組み立てやすさ、コストまでを総合的に考慮する必要があります。
「加工のしやすさ」を設計に取り入れることで、品質トラブルを減らし、コストと納期を劇的に改善することができます。
精密筐体・フレームファクトリー(佐藤電機製作所)では、設計段階からのVA/VE提案を得意としており、試作から量産まで、お客様の板金設計を強力にサポートします。
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