板金筐体の設計ガイド⑤:筐体の塗装・表面処理について

本記事は6記事続けた、板金筐体の設計に必要な特集記事です。ぜひ他の記事もご覧ください。


表面処理は、板金筐体の機能と美観を向上させるために不可欠な工程です。金属表面に様々な処理を施すことにより、耐食性、耐摩耗性、導電性、塗装密着性などの機能を付与するだけでなく、外観の質感を向上させ、製品の付加価値を高めることも可能です。

板金筐体の塗装・表面処理の目的と種類

板金筐体の塗装・表面処理は、主に以下の目的で行われます。

  • 防錆
    金属は腐食しやすい性質を持つため、錆の発生を抑制するために塗装・表面処理が施されます。特に、屋外で使用される筐体や、湿度の高い環境で使用される筐体には、防錆処理が必須となります。
  • 耐摩耗性向上
    筐体の摩擦や衝撃を受ける部分には、耐摩耗性を向上させるために塗装・表面処理が行われます。これにより、筐体の寿命を延ばし、長期的な信頼性を確保することができます。
  • 導電性付与
    電気を流す必要がある部分には、導電性を付与するために塗装・表面処理が行われます。電子機器の筐体など、ノイズ対策や静電気対策が必要な場合に有効です。
  • 塗装密着性向上
    塗装を行う場合、塗料の密着性を高めるために塗装・表面処理が行われます。これにより、塗装の剥がれや劣化を防ぎ、美観を長く保つことができます。
  • 意匠性向上
    製品の美観を高めるために、様々な塗装・表面処理が施されます。光沢のある仕上げや、マットな仕上げ、ヘアライン仕上げなど、用途やデザインに合わせて選択することができます。

以下は、板金筐体で一般的に使用される表面処理の種類と、それぞれの特性です。

  • メッキ
    金属表面に他の金属を薄くコーティングする処理です。 防錆、耐摩耗性向上、導電性付与、意匠性向上などの目的で行われます。メッキには、ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキなど、様々な種類があります。
  • 塗装
    金属表面に塗料を塗布する処理です。防錆、意匠性向上などの目的で行われます。 塗装には、粉体塗装、溶剤塗装など、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。
  • アルマイト処理
    アルミニウムの表面に酸化皮膜を形成する処理です。耐食性、耐摩耗性、意匠性などを向上させることができます。 アルマイト処理には、様々な色をつけることができます。

板金筐体の塗装・表面処理の選択基準

表面処理を選択する際には、以下の要素を考慮する必要があります。

  • 使用環境
    屋外で使用される筐体には、耐候性が高い表面処理を選択する必要があります。また、高温環境や腐食性ガスが発生する環境など、特殊な環境で使用される筐体には、それに適した表面処理を選択する必要があります。
  • 要求される機能
    導電性が必要な場合は導電性が高い表面処理を、耐摩耗性が必要な場合は耐摩耗性が高い表面処理を選択するなど、要求される機能に合わせて表面処理を選択する必要があります。
  • 意匠性
    製品のデザインに合わせて、光沢、色、質感などを考慮して表面処理を選択する必要があります。
  • コスト
    表面処理には、それぞれコストが異なります。要求される機能や意匠性とコストのバランスを考慮して、最適な表面処理を選択する必要があります。

板金筐体の塗装・表面処理と他の工程との関連性

表面処理は、他の工程と密接に関係しており、表面処理の選択が他の工程に影響を与えることがあります。

  • 溶接
    溶接後に表面処理を行う場合、溶接による熱影響で表面処理の仕上がりが変化することがあります。溶接の種類や溶接条件によっては、表面処理前に焼け取りや研磨などの後処理が必要になる場合があります。
  • 曲げ加工
    曲げ加工後に表面処理を行う場合、曲げ加工によって材料が伸び縮みするため、表面処理の膜厚が変化したり、割れや剥がれが発生する可能性があります。曲げ加工の程度や表面処理の種類によっては、事前に対策を講じる必要があります。

まとめ

表面処理は、板金筐体の機能と美観を向上させるために非常に重要な工程です。適切な表面処理を選択することで、製品の性能、信頼性、意匠性を高め、付加価値を高めることができます。しかし、表面処理は他の工程との関連性も高く、最適な表面処理を選択するためには、材料の特性、加工方法、使用環境、コストなどを総合的に判断する必要があります。

次は板金筐体の組立について、解説します。

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