筐体設計時によく発生するトラブルとは
筐体とは、機械や電子機器などの内部を保護する外枠のことです。製品の外観を決定づけるだけでなく、内部の部品を衝撃や振動、熱、埃などから守る役割を担っています。そのため、筐体設計は製品の機能性を確保する上で非常に重要な工程となります。
しかし、設計の過程では、様々なトラブルが発生する可能性があり、これらのトラブルは、開発期間の長期化やコスト増加、品質低下などに繋がる可能性があります。
本記事では、筐体設計時によく発生するトラブルとその対策について解説していきます。
筐体設計において起こりやすいトラブルとは
筐体設計において起こりやすいトラブルは、大きく分けて以下の2つの要因に分類できます。
・新規の設計・生産方法の場合のトラブル
・トレードオフによるトラブル
新規の設計・生産方法の場合のトラブル
近年、製品の小型化、軽量化、高機能化が進んでいます。それに伴い、筐体設計においても、下記のような新しい技術、設計方法、生産方法、材料などが次々と導入されています。
・3Dプリンターやレーザー加工などの新しい製造技術の導入
・従来とは異なる構造や形状の筐体設計
・新しい設計ソフトやシミュレーションツールの導入
・軽量化や高強度化のための新しい材料の導入
・コスト削減や品質向上のための新しいメーカーの採用
これらの新しい設計・生産方法は、製品の性能向上やコスト削減に貢献する一方で、従来とは異なる工程やノウハウが必要となるため、予期せぬトラブルが発生する可能性が高くなります。
トレードオフによるトラブル
筐体設計では、強度、軽量化、放熱性、密閉性、コスト、性能、デザイン性、機能性など様々な要素を考慮しながら最適な設計を行う必要があります。しかし、これらの要素は互いに相反する関係にあることが多く、トレードオフが発生します。下記でよく一部ご紹介します。
強度と軽量化
製品の強度を高めるためには、厚みのある材料を使用したり、補強材を追加する必要があります。しかし、これらの対策は、筐体の重量増加に直結してしまいます。一方、軽量化を追求するために薄肉化や軽量材料を採用すると、今度は強度が不足し、外部からの衝撃や振動に耐えられなくなるリスクが高まります。特に、持ち運びを前提としたモバイル機器や、落下リスクの高い屋外で使用する機器などでは、強度と軽量化のバランスを慎重に見極める必要があります。
放熱性と密閉性
筐体内部に発熱する部品がある場合、放熱性を確保するために、筐体にスリットや穴を設けたり、放熱ファンを取り付けるなどの対策が必要となります。しかし、これらの対策は、筐体の密閉性を低下させ、埃や水分の侵入を許してしまう可能性があります。逆に、密閉性を高めるために筐体を完全に密閉すると、今度は内部に熱がこもり、部品の故障や性能低下の原因となる可能性があります。特に、精密機器や高温多湿な環境で使用する機器などでは、放熱性と密閉性のバランスを適切に保つことが重要となります。
設計の初期段階では、これらのトレードオフについて、どの要素を優先するかを明確に決めておく必要があります。しかし、開発の途中で、市場のニーズや顧客の要望、技術的な制約などにより、優先順位が変更されるケースも少なくありません。
それぞれの対策
新規の設計・生産方法の場合の対策
新規の設計・生産方法を採用する場合、過去の製品データやノウハウを参考にしながら慎重に進めることが重要です。そのために、過去の設計データや製造データ、トラブル事例などをデータベース化し、容易に検索・参照できるようにしておくことが有効です。
以下のような情報をデータベースに蓄積していくことが考えられます。
設計データ
過去の製品の設計図面、3Dモデル、仕様書、技術資料などをデジタル化して保存します。CADデータやシミュレーション結果なども含めることで、詳細な情報まで記録しておくことができます。
製造データ
使用した材料、加工方法、組立手順、検査結果などの製造に関する情報を記録します。製造現場で発生した問題点や改善策なども記録することで、製造プロセスの改善に役立ちます。
トラブル事例
設計ミス、加工不良、組立不良、品質不良など、過去に発生したトラブル事例を詳細に記録します。トラブルの原因、対策、再発防止策などを記録することで、同様のトラブルの発生を未然に防ぐことができます。
ノウハウ
設計や製造に関するノウハウ、技術的なTips、専門的な知識などを共有します。ベテラン技術者の経験や勘などを形式知化することで、技術の継承に役立ちます。
トレードオフによるトラブルの対策
トレードオフによるトラブルを避けるためには、設計の初期段階から、顧客との綿密なコミュニケーションを図り、認識のずれをなくすことが重要です。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
3D-CADなどを用いたビジュアル化
従来の2次元図面では、設計の意図や完成イメージを顧客に正確に伝えることが難しい場合がありました。しかし、3D-CADを用いれば、筐体の形状や構造、部品の配置などを立体的に表現することができ、顧客はより直感的に設計内容を理解することができます。さらに、3Dモデルを回転させたり、断面を表示したりすることで、細部まで確認することができ、認識の齟齬を最小限に抑えることができます。
上流工程からのすり合わせ
設計の初期段階から顧客と密に連携し、設計内容や仕様、優先順位などを共有することで、顧客の要望を正確に把握し、設計に反映することができます。具体的には、定期的な打ち合わせやデザインレビューなどを実施し、3Dモデルや試作品などを用いながら、顧客と意見交換を行うことが有効です。
VAVE提案
製作する企業からのVAVE提案も積極的に活用することで、トレードオフの最適化を図ることができます。VAVEとは、Value Analysis/Value Engineeringの略で、製品の価値を向上させるための活動です。当社は、独自の技術やノウハウを活かし、設計の段階でコスト削減や品質向上、機能向上のための提案を行うことができます。例えば、材料の変更や加工方法の改善、部品の標準化などを提案することで、コストを抑えながら性能を向上させることができます。
当社の板金筐体 設計・製作サービスの3つの特長
①設計段階からのコスト削減提案
豊富な経験と専門知識を持つ技術者が、お客様の図面を精査し、材質や加工方法の見直しを積極的に提案します。製造コストや納期を考慮した設計変更など、年間100件を超える改善提案実績があり、試作品から量産まで、あらゆる段階でコスト削減と品質向上を支援します。
②最新設備による高精度加工
曲げ加工、レーザー加工、プレス加工、溶接加工など、最新鋭の設備を導入し、高精度な加工を実現しています。さらに、メッキ、塗装、印刷、部材調達、組立、出荷までを一貫生産することで、工程間の連携を強化し、安定した品質とコスト効率の高い製品を提供しています。
③徹底した生産管理による短納期対応
西関東エリアの工場では、最先端の生産管理システムを導入し、工程の進捗をリアルタイムで管理しています。図面の電子化やタブレット端末の活用による情報共有により、納期遵守率97%を達成。安定した生産体制を構築することで、多品種少量生産にも柔軟に対応し、単品でも量産品でも最適なコストと短納期で提供しています。
筐体の設計・製作なら当社にお任せください
精密筐体・フレームファクトリーを運営する佐藤電機製作所は、過去多くの精密板金筐体の設計・製作をしてきました。当社はそのノウハウから、通常だと時間のかかる溶接を行う箇所をリベット接合に変更するなど柔軟な納期に対応できるような体制を整えています。
他にも歪みを抑えて製作したい、短納期で対応してほしいなど、些細なことでも是非一度当社にご相談ください。